アニメ映画『音楽』 の感想

2022年初投稿である。
今年はいろんな作品だったり本の感想を定期的に書いていきたい。
実際に所感を言語化して変換する訓練の場になればなと思う。

今年見た初めての映画アニメ映画『音楽』なのだが、これが想像以上に面白くて早速感想でも述べたい。

話のあらすじはこれでも見てくれたら

eiga.com

楽器も触ったことがない不良学生たちが思いつきでバンドをスタートさせて最後ライブをする話。これだけ聞くと感動ストーリーだが不思議と感動というものでもない。むしろ不思議な中毒性がある映画だ。

皆で一生懸命楽器を演奏してうまくなるとか、不良が改心するとか、演奏に関してメンバー内での議論とか、超えられない技術の壁で挫折してからの克服とか、そういう王道のお話でもない。もっとテキトウで何だかよくわからないけどうまくいっちゃうお話だ。


まず作画が不思議なんだ。背景が異様に綺麗なのに(最後のライブシーンの躍動感は秀逸)、一方でキャラに関しては手抜きなんじゃないかみたいな表情の絵で。と思ったらキャラの動作に関してはリアル。

不思議に思って調べてみたらロトスコープという手法を使っていることがわかった。実写で役者が演じた映像を元に、体型や輪郭などを線で拾い、紙に描き写していくことで動きを作り出す手法だ *1

なるほどそれで背景だったりキャラの動作がリアルに思えたわけか。背景に比べると圧倒的にキャラの顔の作画がテキトーに見えるが、それでもケンジ以外の太田や亜矢ちゃんだったりの表情は豊かで、一方でケンジは不思議と何を考えているかわからない。表情がほぼ変わらず声のトーンも変わらずだからそりゃわからない。と思ったら実はケンジが一番人に気を遣わずに自分の思った通りに動いているから不思議である。行動で考えていることがわかるから表情がいらないのかも。

あと古美術がビラを配る場面以降急に作画が綺麗になっている気がする。
制作に7年経っているし時期によって作画が変わるってことなのかな。


次にケンジについて。

ケンジの何かやるけどだから何?という態度が見ていて爽快である。自分のテキトーな決定に関して良くわからないけど他人に有無を言わせない。

とりあえず音を出してみる、一般的に正しいやり方でもないし(何ならケンジたちもよくわかっていない)、明らかにバンドとしては変則的だし(ベース✕2、ドラム)、だけどとりあえずやってみる。出した音に感動する。萎縮するわけでもなく、等身大で堂々としていて、気づいたらそれに周りが巻き込まれて影響を受けてしまうような。
自分達のバンド名、古武術と近い古美術ってバンドが学校にあると気づいたときも、とりあえず会って話してみるか的なノリでお互い演奏し合ってその結果ロックフェスに参加することになった。最初に頭ごなしに決めつけるよりとりあえずやってみて考えるかぐらいテキトーなノリが好きだ。

ただケンジはマイペースで実感をすぐに伝えちゃうから、周りが振り回されて迷惑を被る。実際ライブに参加すると言いながら一人で急にバンドに飽きて辞めると言い出す。しかし何だかんだ周りが発破をかけたり、根回ししてくれて最後ケンジもやる気を出してケツでリズム取ったり隠れてリコーダーを練習し始める。そして最後しっかりライブに参加していいとこを持っていく。何だかんだ憎めない奴だ。

ケンジの行動そのものに中毒性がある。



最後に、地味に太田、初めて演奏したときはピック弾きで、亜矢ちゃんがケンジの家に来たときだけはスラップ奏法で、最後のライブではピック弾きで演奏していた。特に意味は無さそうだし、太田がその演奏法に気づいているかも怪しい。恐らく角度的にそう見えたのか、ロトスコープ目的の撮影しているときに演奏者が都度奏法が違ったからぐらいだろう。