昔々あるところに一つの大きな家がありました。
そこには仲が良い夫婦が住んでいました。夫婦の間に子供が二人生まれてすくすくと成長していきました。
二人の子供は自分の部屋が非常に好きだったため、大人になってもその部屋に住み続けると言いました。
夫婦は、充分な広さの部屋に子供が住んでいることを知っていたので許可しました。
子供部屋に住み続けた二人は結婚した後もその部屋に住み続けました。
家族が住む分にも充分広い部屋だったので、無事子供夫婦は子供部屋夫婦になりました。
そしてそれぞれの夫婦には子供が生まれて子供部屋家族になりました。
それからこれが一族の風習になって、そこで生まれ育った子供は親が住んでいた部屋を分割した部屋に住むことになり、大きな争いもなく一族は繁栄しました。
ただ一つ問題が生じました。元々大きな家とはいえ代が重なるごとに家族数は増えていき部屋一つの面積がどんどん狭くなっていきました。もし親が子供を二人産むことを繰り返したら、倍々で増えてしまうのです。
この一族はその対策として1人以上子供を産んではならない一人っ子政策というものを設けました。
これにより部屋を分割する回数は減り、部屋面積の低下も防げるはずでした。
しかし、それでも度重なる部屋の分割により部屋はどんどん狭くなっていき、一族内での不満は溜まっていきました。
そんなとき不満が爆発する事件が起きます。
彼は一族の中では初めて結婚することを選びませんでした。娯楽が充実した現代でわざわざ結婚する意味を見いだせなかったのです。
彼は自分の子供子供子供...部屋を一人で使い切ることができました。
しかし他の結婚して子供を設けた家族から見たらたまったものではありません。普通三人で日々の苦労(主に部屋の狭さ)に耐え偲んでいる中、同じ部屋面積で悠々と独身ライフを送っているわけです。
そこで遂にお前の部屋面積を少し寄越せよと他の家族が独身貴族に向かって言ってしまい、部屋の片隅の実効支配を始めてしまうのです。
実効支配と言う言葉は大げさで、実際には自分の荷物を少量置くぐらいなのですが、それで良い気になった他の家庭持ちも別の部屋の実効支配を始めてしまいました。
今まで一族で守りきっていた秩序が遂に崩壊してしまったのです。
部屋内の荷物は入り乱れ、散乱するようになってしまいました。どこの家庭の荷物だかも良くわからなくなってしまいしょっちゅう家庭間で揉め事が起きました。
最早家庭の子供が更に部屋を分割する制度も形骸化してしまい、力があるものが広い部屋を取り、力が無いものはただ追従するしかなくなってしまいました。
子供部屋戦国時代の始まりです。如何に広い部屋を自分たち家族が取れるかそんなことばかり考えるようになりました。元々同じ一族だったのに。
しかしこの子供部屋闘争もついに終わりを迎えます。
築年数が経過し過ぎたのと度重なる分割によるリフォームに耐えられなくなり遂に家が崩壊してしまったのです。
そこで一族は気づきました。こんな小さな家の中で闘争しても意味がないと。自分たちは何をやっていたのだろうかと悟ります。
そして崩壊した家を後に、二度と争いが起きないぐらい充分に分割できるもっと大きな家を建てようと考えました。
そして夢に向かって彼らは進みだしました。
おしまい、おしまい