二郎系ラーメンは完全食の夢を見るか? Part1

時は194X年、日本は危機に瀕していた。

日中戦争、太平洋戦争、徐々に戦局が悪化していた。

食料不足も著しく出征兵士も力を発揮できいなかった。

国家首脳陣、天皇はこの困難を克服したかった。

そこで秘密裏に国家極秘プロジェクトJPが始動した。スローガンはこうだ。

 

「戦時中でも腹持ちする完全食を作る」

 

この完全食を作るにあたって、東京都某区のラーメン屋「ラーメン幾郎」店長田中に白羽の矢が立ったのだった。

田中のラーメンは一味違った。

当時誰も真似をできない先進的なラーメンだったのだ。

腹持ちが良い豚骨スープ、栽培に時間がかからない大量のもやし、噛みごたえ抜群の加水率高めの麺を組み合わせたラーメンだった。

このラーメン、一日一食で他の食事を全く必要としないスグレモノだ。

大流行した。

ただそれも長く続かなかった。

国家総動員法をきっかけに食料は配給制となり、ラーメン屋の営業がままならなくなった。

田中は悲嘆にくれた。日本が一方的に始めた戦争のせいで皆に俺のラーメンを食べさせることができない。悔しかった。

ただ田中はこれだけでは終わらなかった。田中は自身のラーメンの正しさを証明するべく、配給物資で飢えを凌ぎながらも来る新たな時代に向けたラーメンの着想を繰り広げていた。

国家はこれを見逃さなかった。そしてついに田中が必要とされる日が来た。

大日本帝国陸軍山下中尉が田中の自宅に訪れた。

田中は慄いた。ついに自分が思想犯として投獄されるのか。

幸い予想は杞憂に終わった。

「ラーメン幾郎店主田中、国家危急存亡の秋を救う完全食製作の任を命ずる、これは天皇陛下の勅命である」

田中は驚いた。自分のラーメンが再び皆に食べられる、溜め込んだ着想が発揮されるときが来る。

「ラーメン幾郎店主田中太郎、我が命にかけて作る所望であります」

ということで田中は再び完全食を作るべく出帆したのであった。

 

続く...